Receive up-to-the-minute news updates on the hottest topics with NewsHub. Install now.

中国の「孔子学院」 欧米で広がる懸念、閉鎖の事例も

2017/12/03 23:48
3 0
中国の「孔子学院」 欧米で広がる懸念、閉鎖の事例も

 孔子学院が単なる文化交流機関ではなく、中国共産党が国際世論に影響を与えようとする対外プロパガンダ戦略の一環だと断言するのは、孔子学院の実態を暴露するドキュメンタリー映画「偽りの儒教」を制作した中国系カナダ人のドリス・リュウ氏だ。都内で開催された中国人権問題の会議で映画を上映するために来日した際、本紙の取材に応じた。

 中国政府は2004年に最初の孔子学院をソウルに設立して以来、昨年末までに日本を含め世界130カ国・地域で512の孔子学院を開設。リュウ氏によると「1~2週間に1件のペースで世界のどこかで設立されてきた」のだから驚異的な拡大ぶりだ。大学以下の教育機関に設置される「孔子課堂」も1073カ所に上る。

 中国政府は孔子学院を受け入れる教育機関に対し、教員、教材、カリキュラムを無償で提供するほか、毎年10万㌦(約1120万円)以上の資金を援助。至れり尽くせりの支援で人気の高い中国語講座を設けられるとあって、各国の教育機関が飛びついている状況だ。

 だが、その一方で、欧米では、孔子学院の背後にある中国政府の「隠れた意図」に対する懸念から、提携を解消する教育機関が少しずつだが増えている。

 カナダのマクマスター大学が13年に孔子学院を閉鎖したのが最初のケース。孔子学院の問題点や危険性を社会に告発したのは、中国から同大学に派遣された女性教員だった。

 マクマスター大学で中国語を教えていたソニア・ジャオさんは、中国で非合法化された気功集団「法輪功」の支持者だった。だが、孔子学院との雇用契約には法輪功の一員になるのを禁ずる条項があったため、自由が保障されたカナダでさえ、信念を隠し、中国人の上司や同僚の監視に怯(おび)えながら働くことを強いられた。法輪功の支持者であることが発覚すれば、中国に戻されて投獄される恐れがあったからだ。

 ジャオさんは亡命を申請するとともに、カナダの人権裁判所に苦情を申し立てた。これを受け、大学側は孔子学院の差別的な雇用はカナダの法律と相いれないと判断し、提携を解消した。

 ドキュメンタリー映画「偽りの儒教」は、ジャオさんの証言を中心に構成されている。この中で、ジャオさんは、自らの体験を踏まえ「孔子学院との提携は教員にも生徒にも危険」だと訴えている。

 ジャオさんの勇気ある告発は「連鎖反応」(リュウ氏)を生み、カナダ最大の都市トロントで地元住民を二分する大きな騒動へと発展する。トロント教育委員会は世界最大規模とされる孔子学院を開設するが、激しい抗議活動が巻き起こる。

 映画で取材に応じた中国出身の女性は、「次世代に私たちのような共産主義の洗脳を受けてほしくない」と主張。同市教育委員会で証言した別の保護者は、孔子学院で使われる教科書には毛沢東を礼賛する内容があることを明らかにし、衝撃を与えた。

 世界で孔子学院が最も多く存在するのが米国だ。スタンフォード大学やコロンビア大学といった名門大学を含め、その数は16年末時点でカナダの9倍以上の110に上る。中国政府が対外プロパガンダ戦略で米国をいかに重視しているかの表れでもある。その米国でも、シカゴ大学とペンシルベニア州立大学が孔子学院を閉鎖するなど、警戒感が広がっている。

 リュウ氏の調べでは、このほかスウェーデン、フランス、ドイツ、デンマークでも閉鎖に踏み切る大学が出ており、欧米全体で計12大学と1教育委員会が提携を解消した。

 外国の文化交流機関はブリティッシュ・カウンシルなど他にもあるが、孔子学院が決定的に異なるのは、大学のキャンパス内や公立学区内に設置され、その運営は中国の政府機関「漢弁(ハンバン)」の監督下に置かれていることだ。

 リュウ氏は「孔子学院を大学や教育委員会に帰属させることで、世界各国の数百万人の若者を教える教員やカリキュラムを直接コントロールし、学校の内部から影響を与える能力を手に入れている」と指摘する。

 中国国内には学校に通えない子供が数多くいるにもかかわらず、中国政府は海外の孔子学院に20億㌦以上の膨大な資金を注ぎ込んできた。自国民よりも海外の学生の教育を優先するのはなぜか。未来を担う各国の若者を孔子学院の教育を通じて親中派にできれば、将来の政府や政策にも影響を及ぼせるという長期的な深謀遠慮があることは間違いない。

 映画「偽りの儒教」では、ミシガン大学の孔子学院が開いたコンサートで、学生と思われる若い白人男性歌手が毛沢東や中国共産党を称賛する中国語の歌を歌う映像が出てくる。これが孔子学院の“洗脳”の成果かと、背筋が寒くなる光景だ。

 カナダ大学教員協会は13年に、米国大学教授協会は14年にそれぞれ、孔子学院との提携見直しか解消を求める声明を出した。これは学問・言論の自由が脅かされていることへの危機感からだ。

 マーシャル・サーリンズ・シカゴ大学名誉教授が米誌に発表した論文によると、孔子学院が設置されている大学では資金援助を受けている手前、天安門事件や人権侵害など中国政府が嫌がる問題については触れない「自己検閲」を余儀なくされているという。

 孔子学院の元教員ジャオさんも、チベットや台湾などに関する問題は避けるようにし、それでも生徒から答えを求められたら中国政府の公式見解を述べるよう指示されていたと証言している。

 カナダ政府の情報機関でアジア太平洋地域の担当者だったマイケル・ジュノー・カツヤ氏は、トロント教育委員会での証言で「さまざまな孔子学院がスパイ活動に利用されてきた」ことを明らかにし、孔子学院は各国で情報工作を行うための「トロイの木馬」だと警鐘を鳴らした。

 孔子学院に対する懸念や警戒感が広がる欧米諸国とは対照的なのが日本だ。早稲田大学や立命館大学など14の大学で孔子学院が設立されているが、その問題点や危険性を認識し、提携を見直すような議論や動きは見られない。

 リュウ氏が唯一見つけたのは、10年に大学の事務局長が孔子学院の運営母体である漢弁を「文化スパイ機関」と発言した大阪産業大学のケースだ。だが、中国人学生の反発を受け、大学の理事長は謝罪し、事務局長も役職からの辞任を強いられた。理事長名の謝罪文は今なお、中国共産党機関紙・人民日報の電子版に掲載されている。中国に対する日本の教育機関の卑屈な態度を象徴する出来事だ。

 リュウ氏は日中関係が複雑であることに理解を示しながらも、「日本は自由、民主主義、人権、法の支配といった価値観を大事にする国だ。孔子学院が日本社会にどのような影響を与える可能性があるのか、そして海外では孔子学院をめぐりどのような議論や批判が起きているのか、日本人は知る必要がある」と語った。

出典: vpoint.jp

ソーシャルネットワークにおけるシェア:

コメント - 0