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足かせ壊すのは「あなた」

2017/03/19 7:31
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足かせ壊すのは「あなた」

 田嶋 私はフェミニストに「なって」ないの。フェミニストは女に人間としての権利を求める人のこと。そう考えると、女は皆、生まれた時はフェミニストなんだよ。

 生まれながらにして人間なのに、ボーボワールが言ったように「女」につくられていく。それに私も苦しんだんですね。中学の教師から「女なんかメンスがきたら終わり」、近所のおばちゃんから「勉強できるのに女だから」と言われて。「女になれば愛される」と思って、ハイヒールを履いて。「女」に自分をつくっていったら、頭も体もおかしくなった。それで自分で本を書いてセラピーして。フェミニズムは自分を治す「道具」だったんです。

 谷口 メディアで、フェミニストと名乗るとギョッとされるんですよね。珍獣か? 確かに私、天王寺動物園(大阪市)の近くに住んでますけど、そないびっくりされても。

 先達のフェミニストたちが闘ってこられた歴史があって、私は教育の中でフェミニズムを習いましたが、体得したのはもう少し後。父が近鉄ラグビー部のコーチ、母が寮母だったので、小学1年から高校1年まで花園ラグビー場の中で暮らしたんですね。国や組織を重んじるマッチョな男社会でしたが、母以外の唯一の女だった私は、すごく大事にされて育ったんです。

 ところが大阪国際大に入って、大学祭の委員長になろうとしたら「女がトップになったことがない」と反対された。たかだか創立7年で何言うてんねん、と。その頃、たまたま女性差別撤廃条約の研究をしていた小寺初世子(さよこ)先生(故人)と出会って。現状を学んで、ますます「何ですの、これ」って。

 田嶋 疎開生活で食べ物の差別を受けた頃から、母親に「自分で食ってけるようになれ」と言われて。一方で「女らしくせい、でないと嫁のもらい手がない」というメッセージも受けてたんですね。母は私の小学生時代、脊椎(せきつい)カリエスで寝たきりだったんですが、勉強ができなかったら物差しで殴る。今なら児童虐待だよね。私は線路に横たわって死ぬ練習までした。

 谷口 私の母は田嶋さんと四つ違いですが、重なるなと思うのは「女は手に職をつけなさい」と言われてきたこと。弟2人を大学に行かせるために進学をあきらめたから、願望をどっかで私に投影していくんですね。同時に、どっかで抑圧されてた部分もある。女はこうなっていかなきゃいけないという。

 田嶋 娘は、お母さんの姿を見て育つからね。私は46歳で、最後の恋愛が終わった時にいろんなことが見えたの。相手はイギリス人だったんだけど、母親にそっくりだったんですよね。抑圧して、囲い込もうとする。(母との代理戦争をしてたんだと)そのことに気づいて、やっと自由になった。46から私の人生が始まったんですよ。悔しいから、46歳の2倍の92まで生きようと思ってます(笑い)。

 田嶋 「笑っていいとも!」に出たきっかけは、日本青年館主催の「花婿学校」の講師を務めてたこと。私は、ギリシャのガレー船を例えに使って、結婚制度を(夫は王侯貴族で、妻は奴隷だと)説明してたんだけど、フジテレビから電話がかかってきて。

 私、家にテレビなくてね、「笑っていいとも!」も知らなかったの。「花婿学校の講義をしてください」と言われて、タモリさんとウッチャンナンチャン相手に話すとさ、からかわれて笑われて。あの人たちはそれが役目じゃない。でも私はテレビを見慣れてなかったから、何が何だか分からない。最後は私、水差しの中の水を3人にかけようかと思ったぐらい、頭にきたんだよ。終わった時、プロデューサーに「何で(講義を)邪魔させるの」って文句言ったら、かしこいよねえ。「次は先生、黒板用意してちゃんと話させてあげる」って言うんだよね。

 田嶋 1回が2回、2回が3回になり、結局10回ほど出て。その後「ビートたけしのTVタックル」のプロデューサーが「女の問題を言わせてあげるから出ませんか」と言ってきて、出ることになったの。

 でもね、初めにテレビに出た時、(母校の)津田塾大学の指導教官が電話してきて「お前は大学教授だろう、笑い者にされて恥ずかしくないのか」って、破門されちゃった。うちの母も泣きながら「みっともない」。でも私、教師だからちゃんと話がしたいの。みんながバカにするフェミニズムをどう伝えるか、一生懸命研究してきたわけだから。それにフェミニズムって、くそ真面目にやってもダメだと思ったの。笑いがないと、頭に入らないじゃん。

 タックルの時には、フェミニストたちから「言い負かされて、だらしないわね」とも言われたけど、私が言い負かしたところは編集されてるわけ。悔しいからその人たちには、編集前のテープを送ったよ。その頃思ったのは、100言いたかったら一つでも言えればいい、その代わり100回出ればいいってこと。私の本やエッセーが読まれなくても、テレビならふっと目に入るでしょう。それが私のポリシーだったの。

 谷口 私は3歳の時から「おばちゃん」で、近所の井戸端会議に交ざってたんです。教師として学生たちに男女平等を教えてきたけど、2012年に民主党と自民党の代表選と総裁選をテレビで見て、アゴが外れそうになって。カラスとスズメとハトしか映ってない。黒、茶、グレーのスーツ姿の男性です。フェイスブックで「オッサンのオッサンによるオッサンのための政治。おばちゃん党でもつくったろうか(笑)」って、冗談半分でつぶやいたら、反響がすごくて。自分の友人100人ぐらいをメンバーにグループをつくったら、翌朝には300人ぐらいに増えてたんですよ。

 谷口 女性が自分のことを知って、おかしいと思ってることを言語化して、オッサンに言い返せるだけの知恵と知識を共有しようと思ったんですよ。ちなみに、私が使う片仮名の「オッサン」は、上から目線で独善的、悪いことがあっても絶対に謝らない人のこと。最近、定義が簡単になってきました。「ありがとう」と「ごめんなさい」と「おめでとう」が言われへん人。

 谷口 言いたいことは言う。でも言う時に正面きっては言わず、あくまで横からくすぐる。正論って、受け入れられにくいことがあるんですよね。あくまで笑いを使って、聞いてもらおうとしてきました。

 田嶋 「いいとも」の頃からずっと「男はパンツを、女はパンを」って言ってきました。誤解もされたけど「男は自分のパンツは自分で洗え、女は自分のパンを買えるお金を稼げ」という意味だったんだよね。過労死も、結局は、専業主婦がいる男の働き方が前提の社会システムが原因。女が自分のパンを自分で稼ぐようになれば、女も男も過労死しなくてすむでしょう。だいたいこの(性別役割分業の)仕組みは戦後の復興期、(経済効率性を高めるために)男に外で働かせて、女に家を守ってもらおうとしてできたでしょ。

 田嶋 もう戦後70年以上たってるんだから、制度をやめなきゃいけない。配偶者控除も廃止しないで上限額を引き上げるだけで、いつまでも女に足かせしてさ。何で女が怒らないのか分かんないの。たかが数万円でしょ、得するの。私に言わせれば女の首につけられた鎖だよ。老後を見てごらん。大学卒業した女性が正社員・フルタイムで働いた場合と、出産や育児で中断してパート勤務に変わった場合では、得られる賃金は約2億円も違うと言われている。日本は夫婦別産制だから、稼いでないと財産ないんだから。

 谷口 選択できる状況で主婦を選んでいるなら、まだいいと思うんですよね。でも(夫の長時間労働などで)ならざるを得ないとか、夫が望んだからやっているとか、何となくそういうもんだと思っている、というのはもったいないかもしれません。

 田嶋 専業主婦を否定しているわけじゃなくて、どんな生き方をしたって自由なんだよ。だけど、制度は公平じゃなくっちゃ。安倍(晋三)さんも選挙が怖いのよ。女の人怒らせたら、票が入らないって怖がってるの。

 谷口 一方で、専業主婦対働く女みたいな構図も、そろそろやめたいですよね。その裏で、ほくそ笑んでる人たちがいる。それがオッサン社会です。女性が働くということは(役職などの地位や)お金(給料)が減るということだから、嫌がるオッサンもいるのでは。

谷口 事故などで亡くなったお子さんの「逸失利益」という生きていたら得られた利益のことですよね。近年は変わってきているようですが、大学で男女の賃金に差があるから逸失利益の差はやむを得ない、という判例を習った時には腹が立ちました。

 田嶋 一方で、顔の傷の後遺症の賠償額は、女の方が高かったでしょ。男性が闘って、今は(同等に)変わったけど。「女は顔」って、変だよねえ。昔は、議論で負かした男にブスって言われたよ。

 田嶋 私は苦しみから解放されたくて、自分の尺にあったフェミニズムをつくってきました。自分が自由に人生を生きられるなら、もうフェミニズムとかフェミニストという言葉はいらないかも。私は今、自由に「田嶋陽子」を生きてるからそれで十分。

 谷口 クビにしたい人はいっぱいいます(笑い)。難しいのは、人の意識を変えること。意識が変わらないと制度は変わらない。でも制度ができても、変わらない意識もある。例えば日本国憲法は今年が施行70年ですが、男女平等は実現してますか。「婚姻は両性の合意のみに基づく」のに、なぜ結婚式には「〇〇家と△△家」の立て札があるのか。いまだに意識の中に家制度が残ってるんですよね。意識を壊すのは、フェミニストではなく、普通の人がやらなきゃいけない。その人たちに聞く耳を持ってもらえるように、分かるように伝えるのが大切だと思います。

 フェイスブック上で2012年9月に結成されたグループで、会員は3月10日現在で約5800人。これまでに、政府の「女性手帳」作成の動きに「なんでもかんでも女性に押しつけすぎ」などとする声明を発表▽従軍慰安婦を巡る橋下徹・日本維新の会共同代表(当時)の発言を多言語に翻訳▽特定秘密保護法(13年12月6日成立)に反対を「ヒョウ明」するため、毎月6日にヒョウ柄のものを身につける--などの活動をしている。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2016年)によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は24万4600円で男性の73%だった。過去最少だったが、欧米諸国と比べるといまだ格差は大きい。

 たじま・ようこ 元法政大教授。元参院議員。1941年岡山県生まれ。津田塾大大学院博士課程修了。90年に「笑っていいとも!」に出演、「ビートたけしのTVタックル」など活躍の場を広げた。「愛という名の支配」など著書多数。

 たにぐち・まゆみ 1975年大阪市生まれ。大阪大大学院国際公共政策研究科博士課程修了。2012年に「全日本おばちゃん党」を結成。著書に「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」など。

出典: mainichi.jp

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