コラム:似て非なる北朝鮮とイラン、トランプ政権の危ない綱渡り

2018/05/11 6:08

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[10日 ロイター] - 米国がイラン核合意からの離脱を表明した今、北朝鮮は恐ろしさに震え上がり、米国の意向に対して、完全な透明性と従順な態度で交渉のテーブルに着くと、トランプ政権が期待していることはほぼ間違いない。

北朝鮮はイランとは異なり、短距離ミサイル、中距離ミサイル、巡航ミサイル、そして大陸間弾道ミサイル(ICBM)など各種ミサイルを備えた核保有国であり、20─60発の核弾頭を有しているとみられる。核開発の進展を止める時間稼ぎは失敗に終わった。もし米国が北朝鮮との外交で失敗すれば、危険はさらに高まることになる。

さらに言えば、北朝鮮はすでに、米国のリーダーシップと派閥中心政治の持つ気まぐれな性質を身をもって体験している。イランの核問題に関する包括的共同作業計画(JCPOA)と同じような、1994年に米朝間で結ばれた枠組み合意は、北朝鮮の軍事的核能力の凍結を目的としていたが(それ故、時間を要したが)、米議会が紛糾する中、当時のジョージ・W・ブッシュ政権によって破棄された。

また、イラン最高指導者ハメネイ師が核合意を広範囲に及ぶ外交イニシアチブの一環として見ていなかった一方、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、非核化に向け始動し、韓国、中国、ロシア、日本、米国と積極的に多国間外交を展開している。

イランには、国内政策や外交政策に影響力を与えようとして争っている宗教的な強硬派や改革主義者が存在するが、北朝鮮はイデオロギーや敵対的メッセージ、外交において、より一貫性がある。米国が撤回したり破棄したりできる合意は絶対に避けようと、慎重な姿勢で会談に臨むだろう。

史上初となる米朝首脳会談を控えた米国の合意離脱表明について、北朝鮮に誤ったシグナルを送ると懸念している人たちは、今回の離脱影響を誇張している。

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北朝鮮当局者は、トランプ大統領が下したこれまでの決断を考えれば、イラン核合意から米国が離脱するという180度の政策転換にも驚かないに違いない。

トランプ大統領は、約200カ国が2015年に署名した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱したほか、米国が主導した環太平洋連携協定(TPP)からも撤退。さらには日本と韓国に対し、50年以上も続く軍事同盟の縮小や取り消しを示唆している。

加えて、中東はイランを巡り分断しているが、東アジアは一丸となって米朝外交を支持している。歴史的に見て、北朝鮮にとって最も脆弱(ぜいじゃく)で、直接的な憎悪の対象である韓国は、敵対関係を終わらせ和解することを一番に支持している。

文大統領は、南北関係のさらなる改善につながるかもしれない、可能な限り最善の核合意が締結できるよう、自身の政治的資本と遺産を投げ打っている。一方のネタニヤフ氏は、とりわけ核合意のようなイランとの外交的均衡から米国を引き離そうと粘り強く働きかけている。

韓国とイスラエルは共に、長年にわたる米国の同盟国だが、ネタニヤフ氏はイランとその同盟諸国と戦うか、あるいは彼らを破壊する方を好んでいる。一方、文氏は北朝鮮の平和と繁栄を望んでいる。

アジア地域の他の大国である中国、ロシア、日本も皆、北朝鮮との外交を望んでいる。金委員長と中国の習近平国家主席は5月7─8日、遼寧省大連で、来る米朝首脳会談について協議し、中朝の結束を示した。2人は4月に初めて会談したばかりだった。

北朝鮮を最も警戒している日本でさえ、北朝鮮との首脳会談を検討している。北朝鮮と取引のある東南アジア諸国も、取引を鈍化させてきた多くの制裁を緩和または撤廃する外交交渉を歓迎するだろう。

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1つは、トランプ氏の政治基盤に関係するものだ。ユダヤ主義を支持するキリスト教徒は、イラン核合意の交渉中から強硬に反対してきた。彼らのほとんどがイスラエルを支持する白人の福音主義者で、ユダヤ人は選ばれし民だとする聖書の教えを信じている。

彼らは金委員長との和平交渉に反対する可能性がある。北朝鮮について、人権侵害が横行し、宗教的自由に反対する罪深いところだと考えているからだ。それでも、もし北朝鮮が自ら国を開放するなら、同国の民2500万人の魂が「救われる」可能性に心を動かされるかもしれない。

もう1つの共通点は、イラン、北朝鮮の指導者とも誇り高く、不屈で、戦いを恐れないことだ。イラン元外交官のセイエド・ホセイン・ムサビアン氏は最近、「圧力に対するイラン指導層の対応は、柔軟性に欠け、揺るぎなく、報復的だ」と記している。

同じことが北朝鮮の金政権にも言える。トランプ政権が正しいカードを切らなければ、2017年に朝鮮半島を支配した戦争をちらつかせる言葉の応酬はおろか、軍事行動さえも、引き起こすことになりかねない。

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出典: jp.reuters.com

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