タンカーからの大規模流出「考えにくい」

2018/02/19 0:30

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タンカーからの大規模流出「考えにくい」

 「ガソリンのような油臭が強く、ガスの滞留が懸念された。当初は3マイル(約5.6キロ)以内で人命救助を優先して作業にあたった」。第1陣として現場に飛んだ機動防除隊の白石卓嗣さん(38)は、13日午前6時半に到着した現場の様子をそう振り返る。

 イランのタンカー「SANCHI」(8万5000トン)は貨物船と衝突して炎上していた。「350度まで測ることができる温度計で見ると、燃えていない部分は10~20度ぐらいだったが、炎をあげている部分は振り切っていた。風の流れに沿って、海上に油膜があるほか、重油などの重い油は沈んでいるようで、予想以上に難しかった」という。タンカーは同月14日に沈没したが、白石さんは日中韓の公船が入り交じる現場で同月19日まで現場で対応にあたった。

 タンカーの積み荷は揮発しやすい軽質原油「コンデンセート」14万トン。燃料として重油1900トンも積んでいた。同月17日から18日まで現場に入った同隊の本田重蔵さん(38)は、油処理剤を使わず、船のスクリューで油を拡散させることにした。油臭は相変わらず漂っていたが、この頃には重油の臭いが強くなっていたという。「想像より流出油は少なく、濃い油膜は1~2割ほどだったが、それも時間とともに薄くなっていった」という。

 だが、2月に入ると鹿児島県の奄美大島やトカラ列島などに油状物が漂着した。本田さんは3日にトカラ列島にある宝島に飛び、海岸や砂浜にムース化した油やゴミなどが大量に漂着しているのを確認した。

 機動防除隊は、一般的な海上保安官では対処が難しい油や化学物質の流出などの処理計画などを立案したり、アドバイスを行う専門部隊で、横浜市中区の機動防除基地に16人の隊員が所属している。本田さんたちは、汚染を広げないために靴カバーをつけて作業し、海岸から戻る時に廃棄するなど、油回収の要点について同県にアドバイスを行い、県の回収作業マニュアルにも反映された。

 コンデンセートは揮発しやすく、日本の沿岸まで流れ着いて影響を及ぼす可能性は低く、成分などから漂着したのは船舶の燃料などで使われる重油と見られている。漂着した油と、沈没したタンカーの重油の成分は一致しないが、漂流中に成分が変化することも考えられることや、他に漂着する要因が見当たらないことから、事故で流出した油ではないかと見られている。

 海保は事故当初から、関係機関と連携して情報収集に努めてきた。1月29日~2月2日には、測量船「昭洋」(3000トン)が、予定を変更して沈没した海域付近の海水を採取して油分の調査を行っており、今月末にも結果が公表される予定だ。「昭洋」は、もともと東シナ海で海底地形の調査を行っていたが予定を変更し、1月27日に一般公開のために寄港した長崎で、海水採取に必要な資機材を積んで調査海域に向かったのだ。

 今後も流出は続くのか。機動防除隊によると「船体や燃料の状況が不明なので断定はできないが、重油は粘度が高く一気に拡散する性質はない。ひとまず収まった状態だろう」と語る。漂着した油については「事故の火災による高温で、重油の粘度が低くなったことで、まとまった量が流れ出たと考えられる。火災が鎮火し、沈没すれば温度は下がり粘度も高くなって流出しにくくなるので、大規模な流出は考えにくい」と説明する。海保では「今後も、流出などが起きていないかを注意深く見守りながら、適切に対処していきたい」と話している。

出典: mainichi.jp

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