【主張】桐生9秒87 日本人の可能性に胸躍る:イザ!

2015/03/31 20:03

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 2020年東京五輪の陸上100メートル決勝で日本人選手が9秒台で表彰台に上り、新国立競技場のポールに日の丸がはためく。エープリルフールの冗談ではなく、そんな夢を、本気で見ることができるようになった。

 東洋大の桐生祥秀が米国の競技会で、追い風3・3メートルの参考記録ながら9秒87で優勝した。電動計時で日本人が10秒の壁を破るのは初めてで、換算すれば公認条件の2メートルでも9秒台だったという。

 ロンドン五輪の入賞者や米国のリレーメンバーを制しての優勝にも価値がある。帰国した桐生は空港で「公認の9秒台を国内でしっかり出したい」と話した。今季はまだ始まったばかりだ。正真正銘の9秒台へ、夢は膨らむ。

 19歳の桐生は、東京五輪を24歳で迎える。その伸びしろは計り知れない。直線で速さのみを競う陸上100メートルは一面、人間工学、科学の集大成の競技でもある。総力を挙げて彼をサポートし、大事に育ててほしい。

 五輪の記憶は100メートル走者の名とともにある。1964年東京の弾丸ボブ・ヘイズ(米)、メキシコは人類初の9秒台ジム・ハインズ(米)、ロサンゼルスの4冠カール・ルイス(米)、ソウルは衝撃の失格ベン・ジョンソン(カナダ)、そして北京、ロンドンでは怪物ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の快走に度肝を抜かれた。

 35年6月9日、甲子園で行われた関東、近畿、フィリピン対抗競技大会で「暁の超特急」吉岡隆徳は10秒3の世界タイ記録で優勝した。手動計時の2個の時計は10秒2で止まったが、「身長165センチの日本人が新記録で走ったと世界は信用してくれるだろうか」と審判団協議の末、タイ記録が採用されたのだという。

 この年、吉岡は3度10秒3を記録した。翌年6月、ジェシー・オーエンス(米)が10秒2の世界新を出すまで、吉岡は世界記録保持者の一人だった。

 80年前の伝説に追いつくには、ボルトの持つ9秒58の世界記録はあまりに遠い。だが9秒台で走ってさえいれば、五輪の決勝進出、入賞、表彰台は間近にある。若い才能の伸長を、胸躍らせながら見守りたい。

出典: iza.ne.jp

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