【産経抄】賞金効果 4月1日:イザ!

2015/03/31 20:05

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 アインシュタインの最初の妻ミレバは、スイス連邦工科大学の同級生だった。デートの最中でも、物理学について議論したミレバは、20世紀最大の発見といわれている「特殊相対性理論」の成立にも、大きく貢献したという。

 ▼もっとも結婚生活は、うまくいかなかった。アインシュタインは家庭を顧みず、他の女性に恋をする。ついに離婚を申し出て、ひとつの条件を出した。将来ノーベル賞をもらったら、その賞金を全額、慰謝料として渡すというのだ。ミレバはそれを受け入れる。アインシュタインが受賞するのは、それから4年後のことだ。

 ▼日本実業団陸上競技連合が、マラソンの日本新記録を樹立した選手に、1億円のボーナスを支給すると発表した。かつてのマラソン王国も、世界のトップクラスを仰ぎ見る立場になって久しい。2020年の東京五輪で、メダルを奪還する悲願のための、究極の強化策といえる。

 ▼アインシュタインのように、賞金の使い道を早くも皮算用する選手もいるかもしれない。と、思いきや、スポーツ通の同僚記者によると、現役選手を見渡すかぎり、日本新記録でさえ、ハードルはかなり高いらしい。

 ▼作家の村上春樹さんは、何度もマラソンを完走し、どれほど過酷な競技か熟知している。その村上さんが英字紙を読んでいて、興味深い記事を見つけた。何人もの有名ランナーに、レース中自らを叱咤(しった)激励する、秘密の言葉について質問していた。

 ▼そのひとつを書き留め、簡単に訳して、あるエッセーで紹介している。「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」。1億円の札束を思い浮かべて、苦しみをエネルギーに変える。そんな「がめつい」ランナーの出現に、期待しよう。

出典: iza.ne.jp

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