笑顔、ひやひや、涙 激闘演じた星稜にアルプスも大忙し

2018/08/12 10:58

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 目の前に高く舞い上がった打球の行方を、星稜(石川)の一塁側アルプス席をチームカラーの黄色で染めた応援団が息をのんで見つめた。タイブレークの延長十三回裏無死満塁。白球は浜風にあおられ、吸い寄せられるように右翼ポールに向かっていった。

 スタンドは大忙しの一戦だった。一回にいきなり5点を奪って笑顔がはじけ、八回裏に一挙8点を失って響く悲鳴。だが、九回表に2点を奪い返して同点になると、両手を突き上げて、飛び上がった。

 十二回裏1死満塁のピンチでは、チアリーダーたちが手を合わせ、祈りながら行方を見守った。寺西成騎投手(2年)が連続三振でピンチをしのぐと、スタンドの観客は総立ちになった。

 ただ、延長十三回にタイブレークに入り、最後は相手の大会史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打で幕切れ。4万2千人の大観衆がつかの間ぼうぜんとした後、両チームに大きな拍手が送られた。一塁側アルプス席が星稜の選手たちから一礼を受けると、流れる涙も拭かずに拍手をする生徒もいた。

 石川県かほく市から応援に駆けつけた野球部OBで会社員の山口将平さん(23)は「何回もひやひやした。鳥肌が立つようなすごい試合だった。お疲れさまと声をかけたい」。

 左翼手で途中出場した岡田大響(ひびき)君(2年)の父の大典さん(39)は「勝負は最後までわからない。息子たちには先輩に恩返しが出来るよう、これからも頑張って欲しい」と期待をした。

 一塁側アルプスには、捕手の山瀬慎之助君(2年)、先発投手の奥川恭伸君(同)を温かな目で見守っていた人がいた。同市立宇ノ気中学校の理科教諭、福島栄一さん(40)。中学時代に指導した2人を「大人っぽく、たくましくなった」とたたえた。

 福島さんは2人が中学2年生だった2015年4月に軟式野球部の監督になった。だが、高校時代はパソコン部で野球は未経験。ノックをすればあらぬ方向にボールが飛び、空振りもする。ただ、手のひらをマメだらけにする姿をみて、山瀬君は「福島さんを勝たせてあげたい」と思うようになった。奥川君は「野球を教えてもらうことが当たり前だと思っていたが、指導者と一緒に考えて成長する」と気づいたという。翌年に野球経験者が監督になり、福島さんは部長に。チームは全国制覇を果たした。

 この経験が「野球の原点」というバッテリー。済美との一戦では山瀬君は6投手をリードし、奥川君は4回を1失点に抑えてマウンドを降りた後は、何度も伝令で出てチームをもり立てた。

 福島さんは「山瀬が泣いているところを初めて見ました。奥川も自分がやれることをやっていた。夢のような舞台で、こんなたくさんの人に応援してもらって、また頑張って甲子園に来て欲しい」と話した。

出典: asahi.com

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